活動状況

インターネット政治研究会

主 査 :  清原聖子

幹 事 :  前嶋和弘、小笠原盛浩

研究会主旨: 

2024年米大統領選挙では、生成AIの悪用による偽・誤情報の拡散が懸念されており、生成AIがどのように選挙を変えるのか、という議論も始まっている。そこで、本研究会では、偽・誤情報の拡散問題に関して学際的、かつ国際的に比較検討していく。

2024年度第2回インターネット政治研究会開催報告

「生成AI時代の米韓における選挙とDisinformation問題」
開催日時: 2024年10月26日午後2時半~午後4時45分
開催方法: Zoom

第1部では、米国ジョージタウン大学のダイアナ・オーエン教授から「AI in the 2024 American Presidential Election」というテーマでご報告いただきました。オーエン先生は冒頭に「2024年大統領選挙は初のAI選挙と呼ばれている」とおっしゃり、生成AIによってもたらされる選挙キャンペーンへのネガティブな影響からポジティブな可能性まで包括的に解説されました。とりわけ、AIで生成した偽動画や偽画像などが出回り、偽誤情報の拡散問題が起きていることを懸念していると具体例を挙げて説明されました。一方で、生成AIを利用することで、選挙の効率性や正確性が高まることや、有権者個々人に選挙キャンペーンが働きかけられるため、有権者が市民としての自らの価値をより感じられるようになる、といったポジティブな側面も考えうると述べられました。最後に、最近の連邦議会や連邦通信委員会における生成AIに関する規制導入議論の動向についてもお話され、生成AIの規制の難しさについてもご指摘されました。オーエン先生のご報告を受けて、上智大学の前嶋和弘教授がコメンテーターとしてコメント、質問をされた他、参加者からのチャットを使った質問もあり、終了時間を超過するほどの盛んな質疑応答が行われました。

第2部では、福島学院大学の高選圭教授から「韓国選挙におけるdisinformationの事例・メカニズム・影響」と題してご報告いただきました。初めに、韓国の政治とメディアの状況について詳しい説明があり、韓国では政治の分極化がメディアの分極化を促進している点が指摘されました。また、SNS選挙から生成AIの選挙へ、ということで、2022年大統領選挙では生成AIを使った選挙キャンペーンが行われたと、具体例を挙げて説明されました。2024年の国会議員を選ぶ総選挙では、Deep Fakeが選挙に大きな影響を与えて問題になったというご指摘やDeep Fakeに関して取り締まりが行われたというお話もありました。最後に、今後AIを活用することで政治はどう変わるのか、という展望についても語られました。高先生は、個々人の有権者の生活を学習した「AIエージェント」がそれぞれの有権者にとって最適な投票先、政策を合理的に作ってくれるような時代が来るのではないか、と期待を込めて述べられました。ご報告を受けて、コメンテーターの東洋大学の小笠原盛浩教授からコメントと質問があり、とりわけ「AIエージェント」によって有権者個々人にとって最適な投票先でも、社会全体にとっての効用を考えると、最適ではない候補者が選ばれる可能性がある、といった指摘もありました。また、韓国における選挙産業の発展程度についても参加者から質問があり、第2部も活発な質疑応答が行われました。

あいにく参加者は少数でしたが、第1部、第2部を通して、最新の米韓における「AIと選挙」に関する状況と問題点が明らかになりました。長時間にわたりご参加いただいた皆様にお礼を申し上げます。
【第1部・第2部司会:清原聖子(明治大学教授)】

過去の研究会報告

 

  • 2024年度 第1回研究会(2024年度春季(第50回)情報通信学会大会内)
    日本における偽・誤情報対策の現状と課題