活動状況
情報知財研究会
主 査 : 鈴木 雄一
幹 事 : 玉井 克哉
研究会主旨:
デジタル技術、ネットワーク技術に代表される情報通信技術の進展に伴ってコンテンツの流通形態が多様化し、著作権法をはじめとする知的財産法制はさまざまな対応を迫られている。この研究会では、情報通信技術の進展により具現化しつつある「通信と放送の融合」といった局面に、知財法制、知財政策がいかに対応すべきであるかを研究し、高度情報通信社会におけるコンテンツの円滑な流通の在り方を探る。
2016年度 第3回情報知財研究会報告
日 時 :
2016年12月20日 (火) 15:00~17:00 (受付開始14:30)
場 所 :
東京大学先端科学技術研究センター知的財産・社会技術研究室丸の内分室(サピアタワー8階)
タイトル :
「データは誰のものか? ~データ活用による新たなビジネスモデルの展開~」
報告者 :
西垣淳子(経済産業省商務情報政策局クリエイティブ産業課長)
玉井克哉(東京大学教授・信州大学教授)
モデレータ: 鈴木雄一(防衛大学校教授)
報 告 :
前半、経産省のクリエイティブ産業課で製造業界のIoTにも明るい西垣先生を招き、製造業界ではデータを巡ってどのような議論があるのかを紹介していただいた。
まず、西垣氏は日本の製造現場でのデータ活用が工場での製造現場に限られることが多く、受注段階や設計、保守、リサイクルといった広い視点でのデータ活用ができていないことを指摘した。
そして、データ活用によって、新たなビジネスモデルを構築することまでもが可能となるといった製造現場でのデータ活用の有用性をドイツのコンプレッサーの例をあげて報告した。
データ活用のためにはデータの利用権の問題がつきまとう。現在はデータの所有者と機械の製造者が契約を結ぶことで、製造者も利用可能にしているケースもある。しかしながら、機器メーカーがお互いにデータを共有したり、ユーザーが使用する異なる機器メーカーのデータを活用することなどは現在あまり行われていない。そのようなデータ活用のためのデータの統合やマッピングのためには情報化モデルの作成やデータ利用に関するガイドラインの制定などが求められていると語った。
これについて、日本の製造業のあり方や今後の行政の課題など意見や質問がなされ、議論がよりいっそう深まった。
後半は玉井克哉教授が学者の視点から、『データは誰のものか「データプライバシー」とビジネス』と題した報告を行った。
グーグルはサービスのカスタマイズのため送受信メールまでも分析することをプライバシーポリシーや規約に明記している。このように、グーグルはサービス向上を図るため、個人の様々なありとあらゆるデータを収集していることを紹介した。
その一方でアップルやマイクロソフトは情報を守る、データを取得しないという方向でビジネス戦略を立てていることをアップルペイや、NY捜索令状事件などを例に取り紹介した。
この2つの例を踏まえデータプライバシーを財産権とするという立法政策モデルを提案した。そのなかで、個人の処分できる範囲はどこであるのか、真の同意とは何であるのかという問題点を明らかにした。さらにはデータを格納するサーバを巡る国際的な法的枠組みを検討した。
これについて著作権をモデルにした考え方や、監督行政庁の規制のあり方などについて質問、意見がなされ有意義なディスカッションとなった。
(研究会の様子)
- 2016年度 第3回研究会
データは誰のものか? ~データ活用による新たなビジネスモデルの展開~ - 2016年度 第2回研究会
知財立国研究会共催シンポジウム「元知財部長会議~今だから言える企業知財部の本音~」 - 2016年度 第1回研究会
「音楽著作権ビジネスの最前線」 - 2015年度 第3回研究会
「著作権「ホラーストーリー」の終わり-特にTPPと非親告罪化をめぐって」 - 2015年度 第2回研究会
「パーソナルデータの保護と利活用 -マイナンバー制度の開始を前に-」 - 2015年度 第1回研究会
「特許法の国際的動向 -米国国際貿易委員会の実務と知的財産の価値評価をめぐって-」 - 2014年度 第4回研究会
「パーソナルデータとサイバーセキュリティ―個人情報保護法の改正と今後の課題-」 - 2014年度 第3回研究会
「パーソナルデータ保護の将来像-プライバシーとビジネスの調和は果たされるのか-」 - 2014年度 第2回研究会
「ヨーロッパ特許法のこれから-日独特許法シンポジウムと統一欧州特許をめぐって 」 - 2014年度 第1回研究会
「パーソナルデータの利活用に関する検討会に参加して
~消費者の立場から個人情報保護制度を考える~ 」 - 2013年度 第6回研究会
「パーソナルデータの利活用促進と教育現場での問題
~『子供のプライバシー』についての問題提起をかねて~ 」 - 2013年度 第5回研究会
「他の事業者の事業活動を排除する包括徴収方式を行うJASRACは悪者か?
技術と業界と法制との捻れを俯瞰する」 - 2013年度 第4回研究会
「TPPで日本の著作権法はどう変わるか‐保護期間延長問題を中心に‐ 」 - 2013年度 第3回研究会
「個人データの活用とプライバシー ~ビジネスと法律の狭間で~ 」 - 2013年度 第2回研究会
「個人情報保護法における第三者提供制限義務(23条)の課題と利活用促進策の限界 -現行法下での連結可能匿名化容認案等と23条の潜脱的解釈の問題」 - 2013年度 第1回研究会
「20年間の事件事故を通して見る『IT社会の難点』 」 - 2012年度 第7回研究会
「医療情報の収集と利活用に伴う法的問題 ~ 患者登録の取組み」 - 2012年度 第6回研究会
「ネットワーク上のプライバシー・個人情報保護と識別子
-「IT融合」等ビッグデータ、ライフログ系ビジネス及び医療情報保護法制における法的基盤整備のポイント」 - 2012年度 第5回研究会
「ネットワーク上のプライバシー -消費者の行動と選好に関する比較研究」 - 2012年度 第4回研究会
「デジタル著作物特別法は理論的に可能か」 - 2012年度 第3回研究会
「インターネット上の名誉棄損・プライバシー侵害をめぐる現状と実務」 - 2012年度 第2回研究会
「政府クラウドにおけるプライバシー:米国の最新事情」 - 2012年度 第1回研究会
「Antitrust & Search」 - 2011年度 第6回研究会
「Privacy とPropertyの微妙なバランス:Post 論文を切り口にして Warren and Brandeis 論文を読み直す」 - 2011年度 第5回研究会
「JASRAC概論」 - 2011年度 第4回研究会
「ネットワークビジネスの課題:米国の事例」 - 2011年度 第3回研究会
「リーチサイト問題とサイト運営者の責任」 - 2011年度 第2回研究会
「韓国のデジタル放送と著作権の最新動向」 - 2011年度 第1回研究会
「クラウド・コンピューティングと著作権・序説~コンテンツビジネスへの影響を中心に~」